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左の写真は健全な歯を支えている顎の骨格の写真です。
部分的に歯根が骨の中から露出しているところもあり、歯を支えている歯根の周りの骨は非常に薄いことが分かります。
天然歯の場合は歯と骨の間に歯根膜という結合組織が存在するため薄い骨でも恒常性を維持していますが、歯を失うと唇側の薄い骨は吸収されてしまいます。
右のCT断層撮影のレントゲンを見ると、左側の唇側の薄い骨は抜歯窩(抜歯した穴)は吸収されて幅を失っていきます。
欠損があるところにインプラント治療をする場合、その部位に十分な骨があるかどうかが大変重要になります。
インプラントには天然歯のような歯根膜の組織がありませんので、インプラントの周囲には最低2mmの厚みのある骨がないと、将来吸収していく可能性があることがこれまでの研究によって分かってきました。
もしインプラントの周囲の骨が年数がたっていくうちに吸収が進んでいくと歯肉が退縮してしまったり、最悪の場合インプラントが抜けてしまう可能性もあります。
最初にレントゲン、特にCT断層撮影を行ったり模型の上で正しい診断がなされ、計画的に治療を進めていくことが大変重要です。


先程、歯を失うと唇側の歯槽骨は吸収してしまうことを書きました。それと関係した大きな問題があります。
インプラントの入れる位置が最後にできあがる歯の形を大きく左右することです。
骨が十分あるところでも正しい位置にインプラントを埋入しないと思った通りの歯が再現できず、歯はできたけど審美的に大きな問題になってしまうと取り返しがつかなくなってしまいます。今日のインプラント治療は補綴主導型のインプラントという表現がされます。
それは最終的な歯を設計して、その歯をつくるためのインプラントの三次元的な位置を正確に診断して、インプラントを入れる位置を決めるガイド(サージカルステント)を作製して、1mmの狂いもなくその位置に正確にインプラントを埋入する手技が要求されます。
今日のインプラント治療は骨にインプラントが結合することが成功の基準ではなく、もはやそこにいかに天然歯と調和した自然で美しい歯が再現できるかが成功の評価に変わってきています。トップダウントリートメントのコンセプトがインプラント治療において審美領域では特に重要です。
そのためには十分な硬組織(骨)があるのか、もしなければそこにどのくらいの硬組織を再建(骨造成)が必要か、またその上の軟組織(歯肉)に問題はないかなど綿密な診断のもとに治療計画を組み立てていくことが大変重要です。


インプラント治療が開発された約40年前のインプラント治療の典型的な結果です。
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当院で行ったインプラント治療の今日の結果です。 |
インプラント治療は患者様の人生を一新する画期的な治療法であると言えます。
40年前のインプラント治療によりすべての歯を失った無歯顎の患者様に左のようなインプラント治療がなされ快適な生活を取り戻すことが可能になりました。
しかし当時は咀嚼機能の回復が目的で審美性は劣っていました。
今日では右のように機能のみならず審美的にも最高の歯を取り戻すことが可能になったと言えます。
40年の進化を遂げ、数本の歯は残すことができましたがそれ以外は全てインプラント修復です。15本のインプラントを埋入しました。
結果はどこがインプラントかどこが自分の歯かわからないほどに自然な歯が仕上がりました。
骨結合(Osseointegration)
インプラント治療の基礎となっている
“Osseointegration”という語句はスウェーデン、イエテボリ市の応用生体工学研究所(The Institute for Applied Biotechnology,Geteborg,Sweden)所長ぺル.イングヴァール ブローネマルク博士により40年以上前に名付けられました。
ブロ―ネマルク教授のTissue integration (組織一体化)の概念は、宇宙時代の素材であるタイタニウムをウサギに応用した研究からはじまり、ウサギの腓骨骨髄を生体顕微鏡により観察した際に、その骨組織が低分化の軟組織の層を形成することなく、直接タイタニウムと結合することを発見したことに始まります。この発見は、再建手術に新しい重要な分野を開く結果をもたらし、人工補綴物を永久に生物組織の中に埋め込むことを可能にしました。
年月とともに、このOsseointegrationは基礎科学、特定のトレーニング、外科術式、生体材料、および本法の術式に関する補綴学的研究から、大きな学問体系へと発展しました。
長い期間にわたって、厳密な科学的な環境の中で、多くの基礎的および何千症例もの臨書的研究が蓄積されました。
さらにハードウェアとソフトウェアに関しては非常に高度の精密さが達成されたことにより、患者様は確実で永続性のある予後を保障され、再建手術の結果に悩むことはなくなりました。
1982年、カナダのトロントにおいて歯科臨床におけるosseointegrationに関する会議が、スウェーデン イエテボリのThe Institute for Applied Biotechnology,Geteborg,Swedenとトロント大学歯学部の共催のもとに開催され、ブローネマルク博士によるTissue integration の臨床的研究が、歯科インプラントに関して長期に渡り科学的に綿密な研究が行われた唯一のものであり、適切に治療が進められた場合には、信頼性の高い、長期にわたる良好な予後が獲得され、恒久的に合併症の発言をみることはないとされ、「人工臓器としての口腔インプラントが成功するもであること」が保証されました。

上顎洞挙上術(サイナス エレベーション)
上顎洞挙上術(サイナスエレベーション)
上顎の臼歯部(奥歯)の上方には個人差もありますが、上顎洞(副鼻空)という骨の空洞があり、骨の高さがなくて十分な長さのインプラントが埋入できない場合があります。
このような場合でも上顎洞挙上術(サイナスエレベーション)によって、上顎洞内に骨を再生させ、ほとんどの場合インプラントも同時に埋入することができます。
オステオトームによる上顎洞増大法
オステオトームテクニックは、Summersによって1994年に発表された、インプラント治療に伴う上顎洞底挙上術(maxillary sinus floor elevation)の一手法である。
特に上顎の臼歯部に行われ、柔らかい骨を対象にしている。
一般的に歯槽頂部から上顎洞底までの距離が平均約5mm〜10mmの際に用いられる。
上顎の骨質は下顎に比べて非常に柔らかい場合が多く、表層の皮質骨(硬い骨層)の厚みも薄いか全くない場合もある。
このような骨質のところにドリルのみでインプラントを埋入すると初期固定が十分に得られないことがある。
このテクニックの長所としては少ない外傷で、骨を押し広げ骨を除去しないことにより、柔らかい骨は圧縮され、その結果、骨質が緻密になり改善されることである。
オステオトームテクニックの術式
オステオトームと呼ばれる円筒状の器具を用いて歯槽堤を槌打し、上顎洞底骨を上顎洞粘膜とともに挙上したのち、骨造成材料を挙上部分に填入する。
その後、同日または一定の治癒期間を経て、骨が造成された部分にインプラントを埋入する。
長所としては、少ない外傷で骨を押し拡げ、骨を除去することなく上顎洞底を挙上できることが挙げられる。
一方、術式が繊細であるため、傾斜面をもつ上顎洞底や十分な骨高径がない場合には、適応に限界があるとされる。
オステオトームテクニックの特徴
- 上顎洞底の改善
- リッジエックスパンション(REO)を行う時、インプラントの埋入は任意の場所を選択可能
- 埋入部位の骨の改善
- 骨を収集し、それを上顎洞底に挿入することができる
参考文献
オステオトームテクニックの手順
歯槽頂から上顎洞底までの距離が約5〜6mmで骨質が柔らかい。
インプラントの埋入するポジションを決めて後、オステオトームと呼ばれる円筒状の器具を用いて歯槽堤を槌打し、周囲の骨を圧縮しながら押し広げていく。
オステオトームの先端を上顎洞底の直下で止めた後上顎洞底骨を上顎洞粘膜とともに挙上しながら、骨造成材料を挙上部分に填入する。
GBR (GBR:Guided Bone Regeneration)下顎骨の骨造成術

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下顎の歯槽骨の吸収の過程を表した図です。 時間の経過と共に歯槽骨は水平的にも垂直的にも吸収していくことがわかります。
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GBR(骨誘導再生)法とは、吸収して失われてしまった骨組織を再生させる治療法です。
インプラントの適用症で紹介した通り、歯を支えている歯槽骨は歯が無くなると急速に吸収していきます。
GBRはインプラントを支える歯槽骨を再生させる技術です。
この技術によって骨が吸収してしまった部位にもインプラント治療が可能になりました。
GBRは天然歯の歯周組織を再生させる技術GTR(歯周組織誘導再生法)から発展した技術です。
1970年代後半から1980年代前半、GTRは歯周炎における歯周組織再生(新生セメント質を伴った歯根膜の再生および歯槽骨の再生)を目的とした研究が盛んに行われ、1986年に正式な臨床応用が始まりました。
一方、1980年代後半には、主に口腔(骨内)インプラント治療の適応症拡大のために必要な骨再生を目指した研究が本格的に行われ、1990年代に治療方法として確立しました。
このGTRの生物学的原理に基づいて確立された“骨再生”は、従来の歯周組織再生と区別するためにGuided Bone Regeneration(GBR)と言いいます。
従来、口腔インプラントは骨量が必要かつ十分な部位へ植立することを前提としていましたが、GTRによる骨再生が可能になったことにより、現在では補綴主導型が可能となり、咬合の観点からも理想の部位へ植立することができるようになりました。
更に審美的要件を満たすための骨形成にも応用されています。
下顎骨の骨造成術(GBR:Guided Bone Regeneration)
インプラントは完全に360度周囲が骨に囲まれていることが、長期的な安定のために最も重要です。骨が吸収している場合、上の図のようにインプラントの一部分裂開してしまう場合が多くあります。
GBRの原理
GBR法は手術野をメンブレンで覆い(スペースメイキング)、周囲から軟組織が入らないようにしてそのスペース内に周囲の既存骨から骨が細胞を誘導させます。
GBRの場合スペース内には骨になる骨補填剤を填入します。
インプラントへの応用
チタンメッシュを用いた骨移植による骨造成(GBR)
| 1.歯肉弁を開き、骨欠損部を明示する |
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2.骨再生させる部分の骨の母床に骨穿孔させ、血液供給を促す |
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3.欠損部に骨移植材を填入する |
| 4.骨移植材を填入した部分をコラーゲンでできた吸収性メンブレンで覆う |
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5.吸収性メンブレンを骨移植材の上に設置し、周囲組織から遮断する |
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6.チタンメッシュでできた隔壁を適切な大きさにカットする |
| 7.チタンメッシュで骨再生させる部分に囲いを設置しスペースを確保する |
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8.メンブレンが動かないように、専用の器具で固定する |
GBRによる骨造成では、骨が再生されるまで再生させたい部分を周囲から隔壁を設置して完全に遮断します。そうしないと歯肉などの軟組織など繊維性組織の細胞が混入してしまいそこに成熟した骨が再生されません。
遮断膜は生体と親和性の高いゴアテックス膜や、吸収する生体材料でできた膜、またチタンでできた網状のメッシュなどが使用されます。
手法としてはGBR手術を先に行った後、骨が成熟するのを待ってからインプラントを埋入する方法(二回法)と、インプラントを埋入と同時にGBRで骨造成する方法(一回法)があります。
スプリット.クレスト(Split Crest)による骨造成

スプリットクレストに使われる
Rigge Expanding chisel kit
適用症としては、GBR、バッカルオンレーグラフトの症例と一致しています。
顎骨の水平的な吸収が著明にみられるが、垂直tw期な骨の高さが残っていて、ある程度の基底部の厚みがある場合が適用症となります。
骨を二枚に開き、基底部のある程度厚みのあるところで、くさび状に骨を若木骨折させ、インプラントを埋入させる方法です。
バッカルオンレーグラフトのように他の部位から骨を採集することがないので手術浸襲を軽減できる長所がありますが、インプラントの埋入方向などが制約され、正しい方向に埋入することが難しい場合もあります。
二回法によるRIDGE SPLITTING TECHNIQUE(リッジ スプリッティング テクニック)

Short Implants

十分な骨量がない場合、また解剖的に上顎洞や下歯槽神経などの走行があり、長いインプラントがその部位に埋入できない場合、そこに入るギリギリの短いインプラントを用いる方法です。
一般的に骨の中に入るインプラントの長さが8mm以下のインプラントがこれに該当します。今日のインプラントは表面性状の進化や、構造の設計が改良され性能がよくなったこともこのようなショートインプランが可能になった一因であると言えます。
確かに手術における負担は術者、患者様とも軽減できますが、現段階ではまだ長期のデータは不足しており、今後発展していく分野であるとは考えられますが患者様と話し合って選択していかなければならないと考えます。
骨造成術、骨移植術などの骨移植手術は、単純にインプラントを埋入する手術に比べ、術後の腫脹やある程度の痛みなど術後の手術浸襲が大きいのは確かです。術中における点滴などに腫れや痛みを抑える薬を併用することによりある程度軽減はできますが、術後の患者様の苦痛は外科手術の大きな問題であると言えます。
しかし
インプラント治療において最も大切なことはインプラント治療を終えた後、その結果がいつまでも変わりなく、インプラントが長持ちすることです。
そのためにはインプラントが生物学的に健全に機能するために、科学的に根拠のある技術を駆使することは犠牲ではなく必要条件であるとも言えます。
骨造成した骨は長期的に経過をみると吸収しやすいという研究論文も一方では見られます。しかし既存の骨に埋入したインプラントと骨造成を伴った部位に埋入したインプラントを長期的に比較した多数専門機関の統計で、優位な差はなかったという論文も数多くあり、今日では科学的根拠が証明されています。
我々臨床家として最も重要なことは未曾有な商業主義に流されることなく外科的な手技に関して専門的なトレーニングを受け、十分な知識、手技を身につけてから行う、大規模な骨造成が必要な場合は大学などの経験豊富な専門医と連携をとって行うべきであると考えます。